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◆
私は告白された。
「クルメは、キミのことが好きなんだよ」
唐突に。何の前触れもなく、いきなり、突然、彼女は言った。
夕焼けの土手。
近道しようと。
違う景色を見ようと。
気分転換。
それをしようとした矢先に、声をかけられた。
私はとまどう。
私、磯谷色(いそがい しき)。
女性。
十六歳。
高校一年生。
メガネ。長い黒髪。
中肉中背。顔は普通。
現在、ブレザーの制服を着用。
私は、目の前の少女にとまどっている。
何も言うことができない。
言葉が見つからない。
もう一度いう、とまどっている。
「……ん? 聞こえなかった?」
聞こえてるよ。
少女はこの時間帯にしては制服ではない。奇妙な服だ。……ゴスロリ、なのかな?
赤と黒の横縞のパーカーを着ていた。フードを深々とかぶっている。
パーカーは縦に一直線ジッパーがついてるけど、それを半分まで開けて中のシャツも見せている。中のシャツも赤と黒の横縞だ。どんだけだ。横縞の中に横縞で、その少女は奇妙な図形を一人で描いている。いや、それはまだいい。下に履いている黒のホットパンツが、ちょっとビッチリし過ぎな気もするけれど。足の革靴だけはフツーだねとか、色々あるけれど。いや、全部どうでもいいよ。
「――ガスマスク?」
彼女は、ガスマスクをつけていた。
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