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その声を聞いても、
少女は何が起きたのか、
これからどうなるのか飲み込めずに、
呆然と弟を抱きすくめていた。
「早く行け」
今度は男の声がした。
少女の目に、
長い刃物が映った。
片刃の剣だった。
それはまるで月光を浴びた魚の腹のような銀色をしていた。
蟲よりも、
その刃物に対する恐怖が、
少女に正気を取り戻させた。
弟を引きずるようにして、
その場から遠ざかる。
突然、
横から木の棒で殴られたウミワラジは怒っていた。
躰の前半分を縦に起こして、
相手を威嚇する。
伸び上がると、
民家の二階に届きそうな高さになる。
腹側にひしめく足が威嚇を始める。
その胸部には、
武器となる二本の長い触手が丸まって収まっているのだ。
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