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失われた姫の旅物語
空は蒼く晴れ渡っていた。
海は静かに凪いでいた。
空と海の間に、
大陸の影が浮かんでいた。
白いカモメが翼を広げ、
水面低く飛んでいる。
一隻の船がその後を追うようにして、
波を切っている。
帆柱は三本。
船首側の二本に、
蛇腹に折りたたむことの出来る帆が吊られている。
船尾の帆柱では三角の帆が風を受けていた。
船が向かうその先には、
大陸の玄関口、
タオルンの港が見える。
クナ皇国の東部を占める、
ロントン公国の歴史のある港だ。
船はその長い船旅を、
ひとまず終えようとしていた。
船上では、
船乗り達が入港の支度に追われている。
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