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皇国の守護者である彼らの物語はユズナの故郷、
テパンギにまで伝わっていた。
「私にも乗れるのかしら?」
竜騎兵は、
南の空へ飛び去って行った。
「さあ、
どうかな……竜が怯えなければいいけど」
「それ、
どういう意味?」
シオンは黙って肩をすくめた。
ユズナはシオンとは違って、
剣は提げていない。
だが旅衣の下の服は、
年頃の普通の娘が着るようなものとは異なっていた。
その細くしなやかな手足が自在に動かせる、
軽業師や武人が好む装いであった。
二十日あまりの航海にあって、
夜明け頃、
波に揺れる甲板の上で彼女が武術の型を練っているのを見た者は多い。
竜が怯えるかどうかは別にして、
彼女の名をテパンギの山賊が耳にしたならば、
震え上がって逃げ出すことだろう。
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