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幸いにして同船者達は、
彼女の正体には気が付かなかったので、
壮麗な夜明けの一幕として彼女の演舞を眺めたものだった。
やがて二人を乗せた船は港に入り、
帆を畳むと桟橋に停まった。
「行きましょう、
シオン」
ユズナは跳ねるような足取りでタオルンの港へと降り立った。
タオルンという名には、
クナの古い言葉で〈道の始まり〉または〈旅の終わり〉という意味がある。
一つの言葉に矛盾する二つの意味が与えられているのは、
古代クナ語にはよくあることだ。
それにもしかしたら、
港に与えられる名としては、
これ以上相応しいものは無いのかも知れない。
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