第1章

7/655

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/655ページ
 幸いにして同船者達は、 彼女の正体には気が付かなかったので、 壮麗な夜明けの一幕として彼女の演舞を眺めたものだった。  やがて二人を乗せた船は港に入り、 帆を畳むと桟橋に停まった。 「行きましょう、 シオン」  ユズナは跳ねるような足取りでタオルンの港へと降り立った。  タオルンという名には、 クナの古い言葉で〈道の始まり〉または〈旅の終わり〉という意味がある。 一つの言葉に矛盾する二つの意味が与えられているのは、 古代クナ語にはよくあることだ。 それにもしかしたら、 港に与えられる名としては、 これ以上相応しいものは無いのかも知れない。
/655ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加