第1章

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 タオルンの町は枝分かれした河の州に築かれており、 河の流れに沿うようにして、 扇状に拡がっている。  ユズナとシオンの二人は、 この町で今日の宿を探すことにした。  海沿いの大通りは石畳が敷き詰められている。 それだけでも二人の故郷であるテパンギの港とは大きく違っている。 行き交う人の数も多く、 肌の色や瞳の色の異なる民の姿もあった。  街には、 船上にあって長らく遠ざかっていた、 人の生活の匂いが満ちている。  波に揺れ動かない大地を踏みしめ、 見たことのない街の風景を目にすることで、 ユズナの心は躍った。 「宿の前に、 何か食べましょうよ」  シオンにそう語りかけながら、 ユズナは早くも露店に並んだ食べ物を見比べていた。
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