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「丹羽さん、すみません。」
会議室のドアを出ようとして、みんなが並ぶように立ったところで、私は目の前に立ちはだかる高い壁のような背中に声をかけた。
驚いたように振り返った彼の目と私の目が9年ぶりに合った。
「今までのデータから街コン参加者の男女別の人数や年齢分布、嗜好なんかを知りたいんですが。次回までにお願いできますか?」
言ってしまってから、5人全員の関心が集まっていることに気づいた。
ああ、しまった。そういうことは机に着いているうちに言えって、みんな思っているに違いない。
「わかりました。他にも何かありましたら、いつでも電話してください。」
声だけ聞けば快諾していると思えるのに、冷たい瞳が裏切っている。
なんなの? その不機嫌な様子は。
裏切られて捨てられたのは私の方なんですけど?
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