扉を開けて

2/8
前へ
/8ページ
次へ
教室の戸を開けたら、そこにはまた、彼は居なかった。 「おはようございます」 『おはよーございます』 「はい、出席を取ります、秋元さん」 「はい」 「梅田君、はまたも居ない…」 「小野君」 「はい」 「加藤さん」 「はーい」 私は新任教師この春から初めて担任を任された新米です。 最近の高校生は皆良い子で不良行為はおろか、いじめも殆ど無いのが現状です。 まあ近年、私立の進学校では当たり前かも、 何をしに学校に来ているのかは、ちょっと考えれば高校生でも分かる筈だから。 なので夏休み前から多くなった梅田君の不登校がやたら目立つのです、 連絡も滞っていて少し心配です。 と言うわけで私は放課後、梅田君のご自宅に家庭訪問しに来たのでした。 ピンポーン 全く出てこない、無視されているのでしょうか。 梅田君のお家は古くも結構でっかい一軒家、もしかしてインターホンでも壊れているのかと思い、裏口でもと探してみる事にしました。 南面に回ると緑豊かなお庭が有りました、ここも梅田家ならそれはお屋敷クラスの住宅です、 そこには人が居ました、庭の手入れをしていた麦わら帽子の人が。 「こんにちは、あのこちら梅田裕太さんのご自宅で」 麦わらの人が気付いて帽子を脱いで挨拶をした時、私は気付きました。 「あっ梅田君じゃないの、休んで何をしているのかと思ったら、庭の手入れ」 「あ、いや夏の間、放っておいたらボウボウになってしまったので」 少し日焼けした梅田君を見ると元気そうなのが分かりホッとした。 梅田君は身長160センチちょっと、小柄だが端整な顔立ちで可愛い感じの男の子だ。 「でも無事で良かったわ、連絡もしないで休んでいたから先生心配しちゃったわ、ってあらその髪の毛」 よく見るとその髪は直射日光が当たってかなり茶髪になっていました、 いわゆる夏休みが彼を変えたのでしょうか。 「ちょっと茶色いわね、お洒落のつもり」 「え、いや、実はお恥ずかしい話これは白髪染めでして」 あらいやだ、若白髪、大変ね、そういう事情ならしかたがないわ。 「あの、梅田君、なんで学校に来ないのかしら、何か理由でも有るの」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加