群生トンボ

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 肉食とはいえ、ヤゴが自分より大きな物をたやすく捕食することはできない、けれどそれが、まるで動きもしない、それも、日が経つにつれて腐り、崩れていく肉塊なら?  考えれば考える程気持ちが悪くなり、俺は浮かぶ予想を心の奥に封印した。  …家の外に出れば、あちこちにトンボが飛んでいる。  あの夏と同じ、大量発生したトンボの群れ。  それを見るたびに、もしかしたら今年の春先に、あの池に、餌となる何かが投げ込まれたのではと思ってしまう。  真相は知らない。一生知らなくていい。知りたくなどない。  そう願う俺の鼻先を、一匹のトンボが横切って行った。 群生トンボ…完
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