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「何だよ!この紙芝居!金返せよー!」
5歳位の子供が紙芝居を読んでいた男、ザンネに向かって石を投げる。
実はリストラ宣言の後どうしようか考えた結果
「っあ!俺歴史の1ページに載る出来事やってんじゃん!紙芝居にしたらガキがワンサカ、お金もワンサカ!出版社の人も来たりして本を出して更にワンサカ!イヤッホォイ!」
と思い付き公園で紙芝居を始めたのだ。
「んだとクソガキィ!歴史の真実教えてやった大人に向かって何言ってんだ!」
「勇者様は確かに死んじゃったけど負けるわけないもん!僕も勇者様みたいに強くなって皆んなを守ってやるんだもん!」
子供は更に石を投げつけながら言うとザンネは薄く笑いながら心の中で思う。
(ほら、やっぱあんたが居たから立ち上がろうとする奴が居るだろ?)
「未来の勇者が金、金言うんじぁねぇぇ!」
「騎士団さんこの人がウチの子からお金を取り上げて!」
「イヤァァ!笑ってるわ!悪魔よ!悪魔!」
「皆さん下がってください!後は騎士団に任せて!」
「さぁ今日は店仕舞いだ、じぁ!!」
「そっちに行ったぞー!!
勇者様亡き今、町の平和は我々騎士団にかかっている!!何としても捕まえろ!!」
この時ザンネは思った。
あのクソ野郎!次に会ったら体を穴だらけにしてやる!!
「ぶぅえっくしょん!!」
「マスター風邪ですか?近寄らないで下さいね。」
「君はいつも冷たいね」
あるギルドのマスター室
そこにはスーツ姿の髪の長い女性とスーツ姿の金髪坊主の男性がいた。
「大方どっかの馬鹿が金儲けに失敗したのを”俺”のせいにしたんだろ」
そう言った男の顔はどこか嬉しそうだった。
「マスター、相手は男ですか?」
「大事な事を教えてくれた友人だ」
「すいません、私そっちの趣味の方とは同じ空気を吸いたくないので死んで下さい」
「....何故そうなった。」
ガックリと項垂れる男は気を取り直すと窓に近寄る。
窓の外には子供達がはしゃぎ回り、大人がそれを時に叱り、時には一緒にはしゃいでいる。
「ザンネ、お前を通して見た世界はやはり広く、とても強かったよ。
しかし一つの間違いがある。」
「マスター独り言も良いですが仕事して下さい。」
男は苦笑いで女性に頷くと机に戻り書類を書き始めた。
そして心の中で独り言の続きを言う。
(世界はこんなにも暖かい)
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