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教室の扉を開けるとそこには、俺の妹がいた。
付け睫毛を装着しようとしているその顔は、見るに堪えない形相となっているが、これはまさしく色気づいてきた俺の可愛い妹だ。
再び俺は扉を閉めることにした。今度は、妹の凄まじい顔を見ていられなかった、という理由でだ。きっと泣く子も黙るに違いない。
今日は、一体なんなのだろうか。
とりあえず、妹が化粧を施し終わるだろう時間を見計らって、俺は再び扉を開けた。今度は、鼻毛を懸命に処理する姿が目に入り、俺は無言で扉を閉めた。
女とは、かくも大変なものだ。……いやそうではない、俺はそんな感想を述べている場合ではなく、今度は何故妹がここにいるのか考えなければいけない。
妹が俺の教室に先回りして侵入する理由は……否、もう考えても埒があかないこともあるものだ。
再び、顔面の手入れが終わる時間を見計らって、俺は扉を開ける。
今度は、――教室を開けると、そこには座布団の上で茶を啜る俺の祖父母が居た。
そうして、やっぱり俺は扉を閉めた。
ああ、もう無理だ。俺は論理的な思考を手放すしかない。理屈で説明できない物事が嫌いな俺にどうしてこんな意味の分からない出来事が起こるのだ。冷汗が背中を流れていくのを自覚しながら、俺は扉から手を離せない。
この扉の向こうには、アインシュタインもきっと解明できない物理の法則を無視した意味の分からない空間が広がっている。
俺の日常がある筈の、扉の向こうには、今度は一体誰がいる――。
教室の扉の向こうに広がる異次元空間が、今度は一体誰を連れてきてくれるのか、妙な期待に胸を高鳴らせながら、俺は扉を開けた。
果たして、教室の扉を開けると、そこには。
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