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「…野上?」
恐る恐る声をかけてみる。
「…よぉ。」
私に気づいた野上が
ゆっくりこちらを振り返る。
「おは、よ。」
ん?
言ってから気づいた。
「おはよう」でいいのか?
ていうか今、何時…?
「…ハハッ!おはよ。」
自分で挨拶しといて
戸惑ってる私がおかしかったのか
くしゃっとキレイな顔を崩すと
野上は楽しそうに笑った。
あ…。
私の、好きな、かお。
ゆっくりと真顔に戻ると
野上は急に
変なことを言い出した。
「…野上、か。そいつに見えるの?オレのこと。」
!?
「野上…何言ってるの?」
フワ…
野上は背中の羽を一度だけ羽ばたかせると
その風力で
私の目の前まで
一瞬で飛んできた。
「オレはね、死神。野上じゃないよ。」
イタズラっぽくそう言う。
なに…?
なに言ってるの?
だって
このしゃべり方
この髪型
この顔
この雰囲気
どう見ても
野上じゃない…。
「野上?なんの、冗談…」
「…冗談じゃないんだ、悪いけど。
ぜんぶ、本当のこと。」
そう言いながら
野上…いや、死神さんは
私に背を向けて
「ほら、な?『野上』にはこんな羽、ついてなかっただろ?」
背中の羽を
それが作り物でないことを証明するかのように
少しだけ羽ばたかせた。
「なかった、けど…」
こんなにソックリなことって
あるの?
イマイチ
腑に落ちない。
「それなら、死神さんがなんでこんなところに?」
ここは
私の学校の教室。
なぜこんなところに
死神さんが?
まさか…
「だれか、死んだの…?」
不吉な予感が
胸をよぎる。
死神さんは
少し切なそうな顔をして
一息置いてから
答えた。
「お前、この教室に来る前のこと、
覚えてないか…?」
!?
ここに
来る前のこと…?
そうだ。
私、今
なんでこんなところにいるの?
それに
今は
朝?昼?夜?
いったい
何時…?
わたし…
わたし…?
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