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教室の戸を開けると
そこには
クラスメイトの
野上がいた。
「野…上…?」
全開に開け放った窓に
身をまかせて
細い窓枠の上に立っている。
「野上!!」
今にも落ちてしまいそうな不安定さに
思わず声を荒げて駆け寄った。
「…おー、ちび。」
ゆっくりこちらを振り返りながら
いつものイタズラっぽい口調で
私を呼ぶ野上。
「な、にしてるの!?
あぶ、危ないから早く、こっち…」
なんとか野上を
窓からおろそうと
野上の腕を引っ張る。
「だ~いじょうぶだって、心配すんな。
お前、なんかとりにきたんじゃね~の?」
窓枠に
危なっかしく腰掛けながら
野上が言った。
「あ、うん。あの、明日提出のノート忘れて…」
そんなこと
もはやキレイに忘れていた。
「忘れものとったら、早く帰れよ~?暗くなっちまうぞ。」
「野上は…帰らないの?」
「……」
…あ。
ホラまた
悲しそうな
瞳…。
「オレも、もうちょっとしたら帰るよ。気ぃつけてな。」
うそ。
こんなの
ほっとけない。
このままだと野上が
本当に消えてしまいそう…。
ガッ!
「!」
野上が大きな瞳を
落ちそうなくらい見開いた。
「おまっ、何やってんだよ!?
危ないだろ!!」
野上の隣の窓を
全開に開けて
同じように窓枠に上ってきた私の腕を
野上がとっさに掴んだ。
「へ、平気よ。さささすが3階よね、眺め、いいんじゃん?」
足をガクガク震わせながら
せいいっぱいの強がりを言ってみる。
「なに、やってんだよ…。ホラ、降りろ!」
少し怒った口調で
野上が言う。
「…降りない!野上が降りないなら、私も降りない!
ず、ずるいじゃない?こんないい景色、一人占めして!」
本当は景色を楽しむ余裕なんて
1ミリもない。
私、高所恐怖所なんだけど。
「分かったよ、降りるから!」
「ほんと!?」
野上がそう言ってくれた事に
ほっとした。
「ちび~、お前ってほんと…」
「あ!それ!!」
野上が何かいいかけたのを遮って
私は叫んだ。
「な、何だよ!?」
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