第1章

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教室の戸を開けたら、 そこには イスも 机も 窓さえも 何も なかった。 あるのは真っ白な壁と 2枚の扉だけ。 いま自分が入ってきた扉と 教室の奥に用意された扉。 …バタン。 後ろ手で閉めた扉の音だけが 無機質な教室に響き渡る。 オレは試しに 後ろを振り向いて 今入ってきた扉を もう一度開けてみた。 すると やはりその向こうには 今オレがいるのと同じような 無機質な教室が広がっているだけだった。 さっきまでそこにいたはずの 「アイツ」はもちろん 「アイツ」の座っていた席も 黒板も 窓も どこにも見当たらない。 オレは静かに扉を閉めた。 そして教室の奥にあるもう一方の扉に向かって 一直線に歩いて行った。 ガチャッ。 扉を開けると そこにはやはり 今いる教室と全く同じ 無機質な教室。 オレは扉をくぐり バタン。 その教室に入った。 これで 2枚目か…。 オレはこれと同じ作業を あと 999万9998回 繰り返さなければならない。 …行くか。 オレは猛ダッシュで奥の扉に向かうと 勢いよく扉を開け 次の教室に飛び込んだ。 そのままの勢いで 次の教室 そのまた次の教室 と オレは走り続けた。 38、39、40… オレは最初の勢いのまま ダッシュで扉を開け続けたが 不思議と 体力が尽きることはなかった。 ひたすらノブを回し続けているオレの右手も 酷使されているオレの両足も どれだけ進もうが 全く疲れることがなかった。 お腹は減らない。 眠くもならない。 「アイツ」の言ったとおりだ。 これなら余裕で いけるかもしれない…!
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