第1章

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~~~~~~~~ 「お前…誰だよ?」 部活終わり。 教室に戻ると 見たことのないヤツが オレの席に座っていた。 顔は… 思い出せない。 思い出せないというより 何の特徴も無さ過ぎて まったく記憶に残っていない。 確かに顔はあったはずなのに まるでのっぺらぼうずに出会ったような感覚だ。 「こんばんは、木下くん。」 なぜかオレの名前を知っていた「アイツ」は クラスで1番のモテ女、弓池さんの席に移動した。 「これに、用事ですよね?」 そう言って 弓池が机の横に引っかけている 体操服袋を オレに差し出してきた。 「!」 オレは 冴えない男だ。 サッカー部やバスケ部の華やかな男どもと違って 誰も見向きもしない卓球部の一員で 勉強も スポーツもできない上に 顔も中の下。 クラス1美人で 聡明で …巨乳、な そんな弓池に 近づけるわけもなかった。 だから こうして 部活の練習が終わった後 みんながいなくなる時間に こっそり教室に戻ってきて 弓池の 体操服を 抱きしめる。 それがオレの 日課だった。 体操服がない時もあった。 そんな時は リコーダーでも 上履きでも 何でもいい。 弓池を感じられるものを とにかく 抱き締めたかった。 「てめぇ!!」 自分でもビックリするくらいの甲高い声で オレは「アイツ」から体操服袋を 奪い取っていた。 「…フッ。」 「アイツ」は 気味の悪いせせら笑いを浮かべると 「…いいんですか?健全な15才男児が、こんなことで満足していて?」 冷ややかな声でそう言った。 「ほっとけよ!」 こんなことで満足するしかない そんな人生しか歩めないヤツもいるんだよ! 「大きなお世話だ」 ! 「…というお顔をされてますね?」 !!! 心を読まれたようで 気味が悪い。
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