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第3章
まばたきと、ドアの開閉音が重なった。
汗ばんだ肌に、風を感じる。
ゆっくりと周囲を見回すと、どうやら
俺はバス停に立っているらしかった。
状況がわかるにつれ、泣き出したい衝動に駆られた。
バス停にただ1人、ぽつんと立っている。
こんな事、現実にあるわけない。
このバス停は、街中にあるのだ。
きっと、まだ続いてる。
「俺、どうしちゃったんだろ」
情けない声が、口をついて出た。
よくわからないんだ。
何で、こんな事になってるのか。
いよいよ涙がこぼれ落ちそうになった時、不意にブザー音が聞こえた。
いつの間にか、バスが停車している。
バス停に立っているのだから、バスは停車する。そして、自動扉は開き、
それぞれの目的地まで、バスが運んでくれる。それが、普通、当たり前の日常。
だが。
俺の目の前に停まった、バスの自動扉は、ブザーが鳴るばかりで、一向に
開く気配がない。
ブザーがなる度に、身体が細かく震える。
「お客さん、乗らないんですか?」
苛ただしげな運転手の声が、聞こえた。
止まらないブザー音。
バス停に、1人立ちすくむ。
「…んだ」
何やら運転手が怒鳴っている様だが、
言葉として、耳に入ってこない。
汗と、震えが止まらない。
視界がぼやけて、うつむくとアスファルトに雫が数滴落ちた。
「開かないんだよ…ッ」
もう嫌だ。
誰か、誰でもいい。
終わらせてくれ。
ブーッ
目をつぶった。
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