第1章

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そして次の週、寝起き良く、とても気分がいい状態で八時三〇分に起きた。 ああ、これは駄目だ。焦って叫んだものの、これはもう遅すぎる。さようなら、高校三年間。こんにちは、高校四年間。 もう先生の忠告を破りはしたが、とりあえず学校には向かうことにした。優雅に、とてもゆっくりと朝のティータイムを楽しんだ。目から涙を流しながら。 そして僕は今までの高校生活の中で一番遅い時間に家を出た。 視線は下を向き、足取りが重い状態で駅まで向かった。 駅への道中では、学校に着いたときにどのように言われるのだろう、どこで言われるのだろうなどと、ずっと留年のことについて考えていた。どうやら僕は意外と小心者だったようだ。 駅のホームに着いたと同時に制服のズボンのポケットから軽やかなメロディーが鳴った。 ポケットから携帯を取り出して確認すると、画面には僕が所属している学校名が示されていた。 電話がかかってきたのだ。これはもう嫌な予感しかしない。 「出たくないなあー、嫌だ」 これは出たところで怒られるに決まっている。だから僕は出ない。あえて出ない。 どうせ学校に行けば同じだろう。電話のことはマナーモードにしていたから気づきませんでしたとでも言えばいい。 僕は携帯をマナーモードに設定し、先ほどまで鳴っていた音は鳴りやみ、ブーブーと小刻みな振動を伝えていた。 一度ため息を吐き出して、ゆっくりとポケットに戻した。 「もうどーなってもいいか。僕の留年は決まったわけだし」 まあこれはただの自業自得なわけなのだが、無性に友達に意味のない愚痴を聞いてもらいたくなった。 はー、とため息を溢すとホームの電光掲示板が点灯し、僕が乗る電車のアナウンスがかかった。 電車に乗り込むとそこは朝とは違い、人がかなり少なく、広い空間に感じた。 それから僕は空いている適当な席に座った。 なんとなく、僕が座っている席からおもむろに外を眺めていると、学校の最寄り駅まであと半分のトンネルに潜った。このトンネルに潜ると、あと半分かという目印になっている。 すると、外を眺めていた僕の視界は一瞬にして黒に変わり、当然電車内も先ほどより暗くなった。 その暗さも影響してか僕は瞼をゆっくりと閉じ、そして眠ってしまった。
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