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夏休みに入って間もないある日の土曜日。
テレビには見てもいない緩い情報番組が映ってる。ブンブン回した扇風機を直に浴びながら、リビングのソファにデロンと寝転び、暑いなぁ~と口からアイスの棒を引き抜く。
暑いのならエアコンをつければいい。でも、エアコンのリモコンは電話台のところにある。誰だよあんなところに置いたのは。アイスを取りに冷蔵庫へは行くものの、リモコンを取りに行くのはめんどくさい。
アイスを食べ終え「ふぅ」とゆっくり瞬きしたところだった。
「ちょっとお、亮太!」
「んー、何?」
母ちゃんがダイニングテーブルから俺を呼びつける。
「何? じゃないわよ。こっち来なさい」
「なんよぉ~」
「これ! 高校入った途端この出だしは何? あんまり煩くなんて言いたくないんだけど、こんなことしてたら落ちこぼれちゃうわよ?」
目の前に突きつけられたのは高校から郵送されてきた通知表。一学期の欄には評価C。評定は3と2が並んでる。確かにひどいできだ。それをトントンと指先で叩きながら、煩く言いたくない母ちゃんが煩く言った。
「了解、二学期からもうちょい何とかするよ」
「全く、一年生だからって悠長なこと言ってるけど、お母さん心配よ。あんなレベルの高いところにしなくても、そこそこの所ならどこだって行けるって言われてたのに……何も、同じところ受けなくたって……」
母ちゃんのお小言が小さな独り言になった。
「……別に、関係ないよ」
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