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合唱の練習をしていても、彼女の姿をわざと視界から避けていたし、見る人が見れば、まるで私が彼女を嫌っているように見えたかもしれない。
そういえば、視界からは逃れられたが、一つだけ逃れられなかったものがあった。彼女の声だ。それだけは、私と違っていた。彼女の声は、高いけれど、キーンとなるような甲高い感じではなく、どこまでも透きとおった空のような、伸びやかな感じの美しいソプラノの声だった。
彼女の声は、音楽室を飛び越え、理科室も視聴覚室も越えて、校庭も体育館も職員室も、1年から3年の教室すべて、学校全体をほわりと包み込み、遠回りしながら私の耳へと入って来たのだった。
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