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ようやく家に着いた。いや、ほんとうに家に着いたのだろうか?母の声の代わりに、見知らぬのっぺらぼうの叫び声が聞こえた気がした。父の気配の代わりに、何か恐ろしい黒い巨大な影が、うごめいているような感覚に襲われた。
鏡を覗き込む。そこには、私の姿が何かに怯えるようにぼうっと映し出されていた。
ふと、鏡の中の私がにたりと笑った。思わず、私の顔を手で覆ったが、私の表情は恐怖で凍りついている様子だった。
手指の隙間から、もう一度鏡を覗き込む。そこには、私の姿はなかった…。
そう、そこにいたのは、紛れもなく、渡辺清子さんの不気味に笑う姿だったのだ。
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