第1章

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大きなあながあいていた 風が下へと伸びていく いつもの光景を想像していた私は、踏み出しかけていた足を咄嗟に引いた。 扉に手を添えていて助かった。扉の際すれすれの穴を前に自分の行動に感謝する。 足元に広がる穴は暗く底が見えない。流れる風に揺れるコートに意識を戻され、自分の立っている場所を自覚し恐怖した。 立っているのも怖い ゆっくりしゃがみ込み恐る恐るあなの壁を撫でてみた。 つめたい 綺麗に整えられた淵と垂直に伸びる壁。ひんやり少し湿ったそれは恐らく土。 なにもない。つくえもいすも、鞄も。 辺りを見回し荷物の存在を自覚した時、私の腕には鞄がかけられていた。 そんなはずはない。 確かに机に置いて来た。 暑くなるからと短く揃えられた首には汗が滲み、気が付くと目の前には扉があった。 なかからは声が聞こえる。 時間が迫り慌ただしい様子を感じ、私は扉に手をかけた。 教室の戸を 開けたら、そこには
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