茜色

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教室の戸を開けたら、そこには 静まり返った教室。 明日から始まる新学期に備えて、一足早く持ってきた 重い参考書を自分の机にしまう。 今日が夏休み最後の一日。 とは言うものの、連日吹奏楽部の練習で学校に通い続けた。 いつもと変わらない夏。 いつも通り、朝早く起きて、お母さんが作ってくれたお弁当を持って、 全速力で自転車をこぐ。 「今年は、県大会突破を目指そう! 」 先輩たちの熱い思いは届かず、今年の夏は終わった。 秋の定期演奏会に向けて、暑い校内での練習は続く。 「杏奈ー、帰ろうー。」 樹里がいつも通り、片付けを先に終えて私の元へとやってくる。 「うんー、あ、ちょっと教室よってもいい? 参考書持ってきたから、置いていきたいんだー。」 「うん。いいよー。 あ、私も楽譜とかペンケース置いてこよっかなあ。」 「じゃあ校門とこでいい? 」 「おっけー。」 誰もいない夕方の教室。 夕日があたり、赤く染まっている。 見つからないようにと、机の奥に入れようと一度席に座る。 明日からまた授業始まるのか…… ふうーっと大きく息を吐くと、目を閉じて机に伏せる。 キーンコーンカーンコーン 校内にチャイムが響いた。
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