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教室の戸を開けたら、そこにはいつもの朝の風景が広がっていた。友達と雑談している奴もいれば、本を読んでいる奴もいる。無計画な愚か者は一限の英語の予習を必死にやっていた。
「いよーう、おっは! 待ってたぜ!」
喧騒の中自分の席まで来ると、隣の席の浩太郎がいつものように朗らかな声を上げた。僕に向けられた視線が期待の念に満ちていて、ほとんど白紙のノートの上にシャーペンが転がっている。ため息が漏れた。
「待ってたのは僕じゃなくてこのノートだろ?」
鞄を置いて中から自分の英語のノートを取り出し、それで奴の頭をポンと叩く。浩太郎は頭上のそれを恭しく両手で受け取り、「ありがとうございます! 俊介様!」と叫んだ。
「たまには自力でやってこいよなぁ」
自分の席に座りながら、忙しなく英単語を綴る浩太郎に言うと、奴はノートに視線を向けたまま「俺だってそうしたいのはヤマヤマなんだけどねぇ」と呟く。
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