第1章

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5分の格闘の末、やっと一羽捕まえることができました。耳の裏にまで鳥肌が立っている気分。 鶏の足にひらひらとした白い紙テープがついていて、何か書いてあります。 「『三羽目』・・・?」 廊下からあわただしい足音が聞こえ、軽いノックののち戸が開きました。 「長井先生、授業中すみません。うちの教室に鶏が・・・あ、やっぱり!」 彼は四年生の担任、小山先生。今年からの新人教師です。頼りなさげな八の字眉に、レトロな丸メガネをしています。若者の間で流行っているのでしょうか。 男の人の大きな手に包まれた鶏が私をギロッと睨んだ気がしました。 「こ、小山先生のところも」 「それが、捕まえてみたら『二羽目』って書いてたんです」 「こちらは『三羽目』。まだもう一羽ここに・・・」 小山先生は素早く残りの一羽を捕まえました。 「あっ、これ『四羽目』だ」 「そ、そしたら『一羽目』がまだいるということでしょうか」 「じゃぁ、二年生の諸君、長井先生と私は『一羽目』の鶏を探すから、自習しててください」 半ば強引に生徒たちに言い放ち、小山先生は教室の戸を脚で閉めました。
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