第1章

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手すりをつかみ眼下を眺めると、山に囲まれた小さな町が一望できます。町とはいえ、鶏を飼っている家庭もあります。 迷い込んだのでしょうか。 いや・・・ 「教頭先生かもしれません、この鶏。私が鳥恐怖症なのを知っていて」 小山先生は丸メガネを外し、Tシャツの裾で拭いています。いつのまにか鶏を放しているけど、大丈夫かしら。 「去年の林間学校でバードパークに行ったときに・・・あの・・・」 思わず身震いしてしまいました。 「な、長井先生、嫌なことは無理に思い出さなくていいですよ」 「教頭先生、私のこと、なんだか気に入らないみたいで」 「それは、見てるとわかります。・・・まぁ、教頭先生も女性ですからね。長井先生の若さに嫉妬しているんじゃないですか」 明るい口調で言うと、彼は私を覗きこんで笑いました。いまどきの四年生もしないくらいの、屈託のない笑顔。 「わ、若くないですよ!」 「若い若くないは、理由じゃないんですけど」 小山先生の言葉が風に飛ばされて聞き取れませんでした。 「私、頑張って良い先生やってるつもりなんですけど、いつか、プッツリ、切れそうで」 「僕なんてもう切れてますよちょくちょく。四年生ってあんなんなんですね。新任にして自分が教師に向いてないことを知りました」 「そんな」 一時間目終了のチャイムが鳴りました。 「あ!は、はやく一羽目捕まえなくちゃ」 小山先生は、いたずらをする前の顔をしました。毎年子供たちを見ていれば、そういう表情はわかります。な、なんでしょう・・・
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