P.W.

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P.W.

教室の戸を開けると、そこには、8つの扉があった。 この表現は不適格なものだ。 実際にこれを見ているのは、人類の中では、鵺森権兵衛、ただひとりなのである。 これは奴の意識下で起こっているものである。 なぜ、教室なのかと尋ねたことがある。 奴は、小学一年生の夏までしか学校に行っていない。 そのせいなのだろうか、学校への執着が、いい意味でも悪い意味でもあるのだという。 我はある理由で、ある人物を探した。 そして、この鵺森権兵衛にたどり着いたのだ。 我はこの世界の創造主である。 銀河系の地球では、創造神などとほざいておるが、そんなものはおらぬ。 我は世界を作り出すことと、世界を壊すこと、そして、多少の能力を持ち合わせているのみだ。 ある日、我は眠りに付いていた。 目覚めると、我の創造した宇宙がふたつに増えていたのだ。 我にはそのような能力はない。 何かが原因で、そうなったのであろう。 我は気にしなかった。 しかし気が付くと、我の創造した世界が8つになっていたのだ。 我はふと思った。 我が作ったオリジナルの世界はどれなのだ。 気になり、しかも暇なゆえ、生物のいずれかにナゾを解明させるように思ったのだ。 我の意識下で、これを想った。 「鵺森権兵衛」 この名前のようなものが浮かび上がったのだ。 我は、8つの世界に意識を飛ばし、鵺森権兵衛を探した。 数箇所で見つかったのであるが、あるものは絶命、あるものは、病床、あるものは浮浪者。 そして、我が知る鵺森権兵衛が適任者と判断した。 この鵺森権兵衛は、資産というものが有り余るほどあり、時間旅行の研究をしていたようだ。 しかし、行き詰まりを感じていた鵺森権兵衛は、別世界というものに執着していたそうだ。 奴の波長と我の波長が同期したのであろう。 そして、我は鵺森権兵衛にある能力を与えた。 別世界移動能力。 我の代わりに調査し、オリジナルを探るよう命じた。 奴は、ある想いがあり、すぐにオリジナルを限定した。 奴のいる世界は、第三世界なのだそうだ。 オリジナルの分裂の分裂。 これが第三世界だ。 オリジナルの限定は、我を納得させるものであった。 実は我は、オリジナルの世界にこの文章を託したのだ。 別に意味はないのだがな。 ただの暇潰しだ。
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