距離

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その出来事を思い出したのか、仁は黙り込む。 けれどそれは一瞬のことで。 またすぐに声を荒げて話し始めた。 「あれはしょうがねーだろ? 誰だって信じるわけねーよ」 「何で? 本当に何もなかったんだよ!?」 「どーだか」 嘲笑うようにそう言う仁に、悲しいとか辛いとか、そういうものを通り越して、もうどうでもいいとすら思ってしまった。 「……じゃあ、あたしも信じない」 「は?」 「あたしも仁のことを信じられない。だから距離をおく」 「……」
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