教室の戸を開けたら、そこには

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 僕が廊下に出ようとした矢先、渡辺さんは言った。 「わたしが机の上に置いておいたエロ本、どこにしまったの?」  僕は足を止めて振り返った。 「……はい?」 「わたしが、君の、机の上に置いておいたエロ本」 「……お、お、お」  上手く言葉を発するのに酷く時間がかかった。 「お前だったのかよ!」 「うん」  ついさっきまで真面目な顔をしていた渡辺さんは、ニヤニヤと小気味良さそうに笑っていた。 「教室に一番乗りして、置いておいたのよ。どんな反応するか見てみたくて。あ、一応フォローしておくけど、それ、兄貴のを借りてきただけだから」 「わかってて、知らないフリをずっとしてたのか!」 「そういうこと。ごめんなさい。でも面白かった。いいモノ、見せてもらったよ。キモかったけどね」 「……渡辺、このッ!」  僕は渡辺をつかまえようとしたが、彼女はひらりと身をかわして教室を出ていった。  まったく、朝の教室というものは何が待ち受けているかわからないものだ。               ~おわり~
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