訪い

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「女性に重いとは非道い事を言う」  膨れっ面になるが、その重さの半分ほどは鎧のもの。  通常、ヨーロッパ方面の鎧。  騎士甲冑は、武士の具足と同じ程度の30kg程と言われる。  彼女の体重に加えて、鎧の重さでは重かろう。 「鎧だ、鎧」 「!! これは、済まん」  早速、手を着いて体を起こそうとするがピクリとも動かない。  どうしたと見れば、ショルダーアーマーが襖と壁に挟まって動けない様子。  恐らく、襖も開かないであろう。  壊しても良いが、敷金が減るのも癪。 「何時まで寝てるんだい? お客さんだよ、お客さん」 「おう、丁度良い。江名よ、悪いが襖を仏壇返ししちくれい」  仏壇返しと言う事は、何かが引っ掛かって開かないと江名は理解した。  雨戸が閉まっている時は、そうやって雨戸を外し。  屋内へ潜入する事も在ったのだから。  少し苦労しながらも、江名は襖を仏壇返しで外した。 「なにしてんだい……? で、この女は?」 「知らん。何時の間にやら居た」  兎も角、余り待たせるのも気の毒。  さっさと着替えると、田嶋は玄関へ。 「御待たせしました。どちら様で?」 「浅草署の本郷です」
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