1・滅びの魔女

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とある酒場での話。 私は一人の年老いた漁師から面白い話を聞いた。 それは、この島に"滅びの魔女"がいるという話だ。 滅びの魔女は自らの命を引き換えにして世界を存在させているとされ、魔女をその島から引き離そうとする者には悲劇が起こるとされている。 しかし魔女は誰よりも心が綺麗であるため、”世界”以外の者には愛される。 そのため、魔女をその呪縛から解き放とうとする者は後は絶たなかった。 ある者は、魔女を船に乗せたが嵐に合い沈没。 ある者は、魔女を空から逃がそうとして雷に打たれ。 ある者は、海に橋を建てていた最中に津波に流された。 ほかにも数多くの者が死亡するというのに、魔女を逃がそうとする者は絶えない。 そんな中、魔女は全ての者に告げた。 ”もう、あきらめてください。”と。 魔女は城の自室に閉じこもるようになった。 そして魔女が”世界”以外のものを愛している事を、全て者もは悟った。 それからは彼女が人前に現れることはほとんどなくなった。 彼が話してくれた面白い話とは、このような内容であった。 この話を私にしてくれた漁師は、私が口を開くまでは私の顔をただただ見つめ、眼を細め笑っているだけであった。 その笑顔はどこか昔を懐かしむような顔に私はみえた。 それと私は運がいいらしい。 いくつかその話について質問をしてみると、漁師は話ついでだと笑いながら、年に一度あるジュテルク祭(※1)に彼女は姿を現すのだと教えてくれた。
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