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不自然なほどの空白に何かでつけたような、跡がたくさんついていた。
とっさに机の上の鉛筆で、空白部分を塗りつぶす。
全てを塗り終えた。
そこに浮かんだメッセージ。
『野村 優雅へ
突然居なくなってごめんなさい。
別に、優雅に正体がバレたからじゃないです。
確かに、私は死んでいます。
■■■騙していてごめんなさい。
■んなに小さかった弟が、こんなにカッコよくなってた■……驚くことばっかだったよ。
その弟■私のように自殺を考えていた時はすごく怖くなった。
最後に弟に会いたい。
それが、心残りでした。
でも、再び会えた。
だから、やっ■成仏できる。
私は消えちゃ■けど……ダメダメなお姉ちゃんだったけど、最後に弟を救えて? 良かった。
野村 沙耶華より』
初めにノートに書いてあった。
『今までありがとう』
その文字まで、塗りつぶしてしまったけれど……上から順に当てはめると一つの文章になっていた。
『なんで、救えてが疑問系なんだよ。確かに姉ちゃんは俺を救ってくれたよ』
天国まで届くように想いを込めて呟く。
今まで、忘れていた。
確かに俺には姉がいた。
姉ちゃんは、俺が3歳の時に高校から飛び降りて死んだ。
姉ちゃんが大好きだったから……。
覚えているのが辛くて、忘れた記憶。
その思い出は、暖かくて、優しくて、とても苦しい。
『ごめん。姉ちゃん、俺……姉ちゃんの分も精いっぱい生きる。
いつかそっちに行った時はもう一度、交換ノートしてくれよ……』
雲一つない青空に向けたメッセージ。
泣きそうな俺を優しい風が撫でていく。
見上げた空で、大好きな姉ちゃんが笑っている。
そんな気がした。
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