第1章

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不自然なほどの空白に何かでつけたような、跡がたくさんついていた。 とっさに机の上の鉛筆で、空白部分を塗りつぶす。 全てを塗り終えた。 そこに浮かんだメッセージ。 『野村 優雅へ 突然居なくなってごめんなさい。 別に、優雅に正体がバレたからじゃないです。 確かに、私は死んでいます。 ■■■騙していてごめんなさい。 ■んなに小さかった弟が、こんなにカッコよくなってた■……驚くことばっかだったよ。 その弟■私のように自殺を考えていた時はすごく怖くなった。 最後に弟に会いたい。 それが、心残りでした。 でも、再び会えた。 だから、やっ■成仏できる。 私は消えちゃ■けど……ダメダメなお姉ちゃんだったけど、最後に弟を救えて? 良かった。 野村 沙耶華より』 初めにノートに書いてあった。 『今までありがとう』 その文字まで、塗りつぶしてしまったけれど……上から順に当てはめると一つの文章になっていた。 『なんで、救えてが疑問系なんだよ。確かに姉ちゃんは俺を救ってくれたよ』 天国まで届くように想いを込めて呟く。 今まで、忘れていた。 確かに俺には姉がいた。 姉ちゃんは、俺が3歳の時に高校から飛び降りて死んだ。 姉ちゃんが大好きだったから……。 覚えているのが辛くて、忘れた記憶。 その思い出は、暖かくて、優しくて、とても苦しい。 『ごめん。姉ちゃん、俺……姉ちゃんの分も精いっぱい生きる。 いつかそっちに行った時はもう一度、交換ノートしてくれよ……』 雲一つない青空に向けたメッセージ。 泣きそうな俺を優しい風が撫でていく。 見上げた空で、大好きな姉ちゃんが笑っている。 そんな気がした。
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