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「ミスター、お勘定ここ置いとくから!」
ポケットから出したくしゃくしゃの千円札をカウンターの上に放り、颯爽と店を後にしていく。
彼はいつも、そうすると決まってからの行動が素早い。素早すぎるくらいだ。考えるより行動が先に来るというやつだろう。
苦笑まじりにため息をついていると、トレイを持ってカウンターから出てきたミスターが裏木の座っていた席に腰を下ろした。
「いいんですか、仕事中なのに」
「ああ、客なんか来ないからな」
堂々とそんなことを言うミスター。
「これで、何人目だろうな」
ミスターが呟くように言う。暁彦は無言のままうなずいた。
「いつまで続ければ終わりが見えるんだ?」
「腐った能力者がいなくならない以上、終わりなんて来ませんよ」
「……復讐を果たすまでは、の間違いだろう?」
コーヒーカップを持つ手が無意識に止まる。視線を向けると、ミスターの引き絞られた眼差しとぶつかった。
「そうですね。それは全員同じです。もちろん、ミスターもですよね」
「……そうだな」
ミスターは腕を組み、椅子に背を預けて深い息をついた。
「あれからもう、二年になるのか」
暁彦は店の壁に飾られた一枚の写真を見上げる。男性と女性が寄り添い合って写っていた。
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