第1章

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「学校から追い出すなんて、あんまりじゃないかな……」  これだよ。こんなやつがいるから、なかなか計画実行に踏み切れないんだよなぁ。この計画、クラスメイトの支持が得られなかったらそれでおしまいだ。こういう『追い出すのかわいそう派』が多数を占めているようじゃ、しくじりは目に見えてる。まあいい、ルーキーには、改めて後藤のひどさをレクチャーしてあげよう。ルーキーを説得できないようじゃ、他のクラスメイトも説得できるわけがないもんな。 「お前だって、後藤からは散々殴られてるだろ。いまどき、あんなボカスカ殴る暴力教師いないよ。あいつくらいのもんだよ」 「けど、後藤先生、僕だけを殴ってるわけじゃないし……」 「僕だってマッサンだって、山ほど殴られてるよ。だからこんなに怒ってんだろ」 「そうじゃなくて、後藤先生、みんなを分け隔てなく殴ってるっていうか……」 「……最悪だろ、それ。なおさら皆で直訴しなきゃダメじゃないか」 「えっと、だから、なんていうか、後藤先生はね、その……」  ルーキーは何かいい言葉でも浮かんでないかと、キョロキョロと視線をさまよわせた。その挙句に搾り出した言葉はこれ。 「公平なんだよ、後藤先生は。うん」  ダメだ。僕にはコイツが何を言っているのか、さっぱりわかりません。人を公平に殴る奴を追放することが、なぜ可愛そうだと思えるのでしょうか。  同意を求めようとマッサンのほうを振り向いてみたら、マッサンは僕とは違って、ちょっと驚いたような顔をしていた。 「後藤の奴、そんなにみんなのことボコスカ殴ってたっけ? あいつのメガトンパンチをくらってるのなんて、俺たち3人くらいだと思ってたけどな」 「うん、まあ、殴られてる回数はタケちゃんがダントツで多いと思うけど」  あ、やっぱ僕が一番なのね。 「『後藤暴力被害者の会』会長なら任せてくれ」 「いつも遅刻してくるからでしょ」 「いい大人は規則に縛られたりしないんだよ」  ううん、いい言葉だなぁ。我ながら。
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