廊下漂流

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 俺が目を覚ましたのは、保健室のベッドの上だった。  保健室に運ばれるまでの記憶が全くないが、どうやら体育の時間にひどく頭を打ち、しばらく意識を失っていたということらしい。  そして意識を取り戻した俺はその日のうちに、ある女生徒が自殺を図った、という事実を知ったのだった。時間は、奇しくも俺が倒れたのとほぼ同じ頃。  その、女生徒の名前は――……。  俺が見たあの光景、あの場所は、夢と現実の狭間か、あるいは生と死の狭間、だったのかもしれない。とんでもない告白も、経緯がわかればあんまり邪険にするのは忍びないものだ。  なぜ彼女が死を選んだかは定かでない。ただ、死してなお俺にどうしても伝えたい気持ちがあった彼女――矢坂が、一時的にでも俺をあの場所へと誘ったのだ。確実に二人になるために、たぶん、きっと。  彼女の本当の願いは叶えられなかった。しかしながら、俺としては彼女の安らかな眠りを祈るばかりである。  未練がましく、俺の教室の前の廊下をフラフラ漂うなんて真似だけはしないでくれよ、と。
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