第1章

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 教室の戸を開けたら、そこには28人ののっぺらぼうが座っていた。  一人一人きちんと席に着いたのっぺらぼう達。彼らの目と口はどこに行ったかといえば、壁にあった。全て教室の壁にくっついていた。1クラス30人で、私とクマを覗いたら28個の口と56個の目が壁じゅうに張り付いている。目は戸をあけた私をぎょろぎょろと見つめていて、のっぺらぼうたちはみんな机を向いて伏せている。  いつから学校はこんな気持ちの悪い場所になってしまったんだろう。私は自分の席に着く。すぐに黒くて四角い、金属のモノリスのようなものが教室に入ってきて教壇に立つ。ギイギイと黒板をひっかくような音をあげて何か喋っている。私にはそれが聞き取れない。うるさい。気分が悪い。 「大丈夫ですか?足は」  ギイギイと軋みながらモノリスは私に呪いをかける。このところ毎日だ。モノリスの呪いに引っ張られるように、壁中の口が開いたり閉じたりを繰り返しだす。 「足は」「足は」「足は」「足は」  ボソボソと壁の口は私の足に呪いをかける。すると私の足は変な風に捻じれだす。足首がぐにっと時計回りに捻じれだして、筋が痛む。けれど、けしてその痛みを顔に出さないよう、私は下唇をかむ。痛い、なんて言ったらもっと奴らは酷い呪いをかけてくるに違いないからだ。  いつから学校はこんな気持ちの悪い場所になってしまったんだろう。スピーカーから休み時間を告げるチャイムが鳴るまでの数十分間、私は呪いに耐えながらじっとただ我慢をしていた。そうするしかできなかった。本当に、どうしてこんなことに。
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