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昼休みになると壁から口がいなくなってのっぺらぼう達の顔の上へと戻っていく。だから呪いの言葉は聞こえなくなるけれど、壁の目はそのままじろじろと私を見つめ続ける。視線で呪おうとしているんだ。私にはわかっている。
「ねーえ。おひるはどうするのー?」
クマが、のんびりした声で私に話しかける。全身ピンクで、毛足の長いふわふわとしたクマは私の隣の席に座って、楽しそうに揺れていた。この教室で唯一、目と口を持っていて人の言葉で話してくれる存在だ。
「よかったらー、いっしょにたべようよお!」
「…ありがとう。でもごめんね。約束している人がいるから。」
机をくっつけようとしていたクマは、あからさまに残念そうに首を振った。クマのことは嫌いじゃないけれど、こんな汚い場所で食事をすることはできそうになかった。クマと話している間にも、50以上の眼球が私をにらみつけているのだから。
「中庭に行くのかなあ?きをつけるんだよおー。」
クマは私を引き留めようとはせずに、パタパタとピンクの腕を振った。クマだけは私に呪いをかけない。クマだけは、この教室で正常だった。
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