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「先輩!」
佐倉は松葉杖をつきながら、中庭の中央へと歩いていく。そこには彼が立っていた。両手を空に広げて、優しい頬笑みを浮かべてこちらを見下ろしている。佐倉は昼一人で中庭にいたけれど、彼と一緒にいたんだと私はすぐに察した。
「これがクマです。」
「隈部です。」
佐倉は彼に私を紹介した。つられて私も頭を下げる。彼の頬笑みは暖かくて、励まされるような気持になった。自分が大丈夫なような気がしてくるし、安心するような、不思議な微笑み。あの視線と話声で占領された教室とは全く違い、安らぎを感じる。
「…ねえ、佐倉ちゃん。」
佐倉が中庭に行くのを、私は知っていたけれど黙って見ていた。こうしてケガをして同じような状況になった途端、親友のような振りをしてこのまま傍にいていいものだろうか。佐倉の秘密の場所を紹介してくれて、当然のようにここにいていいのだろうか。
私が尋ねる前に、佐倉は大声でこう言った。
「クマです。私の親友ですよ!」
中庭に設置された、「希望の像」と名付けられた少年の銅像に向かって、佐倉は私を親友だと紹介してくれた。
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