第1章

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 お姉ちゃんはペットボトルを持った手とは反対の手を振る。すると戸棚の扉が開き、その中からコップがひとつお姉ちゃんの方へ飛んでいく。 「もう、お姉ちゃん!」 「ごめんごめん、もうしないから」  全く悪いと思っていないお姉ちゃんの言葉に、私はため息をつく。  お姉ちゃんはダイニングの中央に置かれたテーブルに腰を落とし、コップにお茶を注ぎながら、何気ない口調で訊いてくる。 「ところで妹よ。あの試験はいつになったんだい?」  その問いに、私は少しだけ俯く。 「……明後日」  小さくそう言って、私はコップに入ったお茶を一気に飲む。 「そう、頑張んなさいな。一生懸命やれば、何も心配ないから」  お姉ちゃんの優しさに、笑顔で返す。 「分かってるよ。ありがとね」  そう言い残し、私はダイニングから出て、自室へ向かう。  お母さんはかつて立派な魔法少女だった。  ありとあらゆる系統の魔法を使え、美しい容姿も相まって【熾天使セラフィム】なんて言われていて、向かうところ敵なしだったと聞く。  私の家系は由緒正しい魔法少女の一族で、私のお姉ちゃんは数多いる 魔法少女の中でも五本の指に入るくらいすごい魔法少女らしい。  一つ下の妹も、七歳のときに最高位魔法である召喚魔法を会得して、日本魔法少女協会から特例で魔法少女に認定され、現在十三歳という若さでほぼ全ての魔法が扱える天才。  それに比べて私は、私は…… 「はぁ……」  ネオンが幻想的に輝く街並みを空から見下ろしながら、私は小さくため息をつく。  私は由緒正しい魔法少女の一族の次女。それなりに期待されて育てら れたと思うし、人並み以上の愛情を注がれていたと自覚している。  それなのに私は…… 「どうして私は浮遊魔法しか使えないんだろう……」  今日が終われば、魔法少女認定試験まで二十四時間を切ってしまう。  日本魔法少女協会が主催する魔法少女認定試験では、最低でも三つの魔法が使えないと合格できない。どうして三つかと言うと、どんなに魔法力や魔動力などが弱い女の子でも、三つは魔法を発動させることが出来るからだ。  でもなぜか私はこの浮遊魔法ひとつしか、未だ発動させることが出来ない。 「でも、私はどうしても魔法少女になりたい」  だって約束したんだ。立派な魔法少女になるって。 「よーし! 頑張るぞー!」  私は拳を高く振り上げ、夜空に叫ぶ。
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