第1章

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 それはお姉ちゃんや智菜は簡単に出来ると思うけれど、魔法が使えるようになってから大分経つのに浮遊魔法しか使えないような駄目駄目魔法少女の私には、到底扱えるような魔法ではない気がする。 「さっきから言ってるでしょ出来るって。少しはお姉ちゃんを信用して欲しいものね」  腕を組んで侵害ですという態度を取るお姉ちゃん。 「だって転移魔法は三級魔法でしょ。六級の浮遊魔法しか使えない私がいきなり使えるなんて思えないよ」 「七級から二級までの等級なんてほとんど差異はないよ。最も重要なのは心さ」 「こころ?」 「そう、心だ。魔法はそれを扱う人間の心に大きく左右される。不安や戸惑いなどの負の感情が大きいときは魔法が上手く出なかったり、中途半端な魔法が発動したりする。逆に喜びや自信なんかの正の感情が大きいと魔法が素早く発動できたり、通常よりも精度や性能がいい魔法が発動する」  お姉ちゃんはそう言うと自分の手の平に空気中の水分を集める。やがてそれは野球ボールほどの大きさになって、そのまま凍る。 「魔法っていうのは心持ち次第でいくらでもなんとかなるのさ。確かに才能なんかも大きく関わってくると思うけど、基本的に才能がないから出来ない魔法なんてないんだよ。どの魔法もちゃんと練習すれば使えるようになる」  お姉ちゃんは氷の玉を私の手に乗せる。すると氷の玉は一瞬で水になって空気に返って行く。私は維持魔法が使えないから氷の玉を維持することが出来ない。 「だから、才能がないからとか向いてないとか、とりあえず忘れてとにかく出来るって思っておけばいいってこと」  笑顔で、疑いもなくそう言うお姉ちゃん。  私が私を信じてないのに、それでもお姉ちゃんは私を信じてる。やっぱりすごいな、お姉ちゃんは。 「……分かった。頑張ってみるよ。私。それで駄目だったとしても、後悔はしない」  私はお姉ちゃんに笑顔を返す。  なんだか、今ならどんな魔法も使えそうな気がする。 「……私ってやっぱり才能ない」  私は体育座りでいじけながら言い放つ。  一時間前まではどんな魔法もぱっと発動できる! なんて根拠のない自信がみなぎっていたのに、時間が経過するとともにそんな自信はなくなっていった。  ああ、私はやっぱり駄目な魔法少女です。  いや、ろくに魔法も使えないんじゃただの女の子か。
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