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本当に悪いと思ってるのか分からない言い方だった。
私はお姉ちゃんを睨みつけながら言う。
「どういうことよお姉ちゃん! なんで転移魔法なのにこんなことになるのさ!」
「いやさ。それが転移魔法の原理は遠くにある物質を原子単位に分解して任意の場所で再構築するというものなんだ。けれどその再構築の際に原型通りになるかは、発動させた人間の魔法精度で異なる。つまりは、転移のみに意識を集中させると、今回のような事態が起こる可能性があるってこと」
「じゃあ今のスライムは……」
「うん。朝ごはんが全て混ざってゲル状に進化してしまったのだろう」
「これって、成功したって、言っていいのかな?」
「いいんじゃない。転移魔法にしろ、変化魔法にしろ、魔法に違いはないし、発動させたことに変わりはないんだから」
お姉ちゃんは軽く言い放って軽快に笑う。対する私は未だ自分が生成したスライムが指にねっとりと付いているのが耐えられなくてしきりに腕をばたばたとさせる。
「さて、あとひとつ魔法を覚えなくちゃ」
パンパンと手を叩きながら、お姉ちゃんはスライムになった私の朝ごはんを足元に集める。それは次第に元の姿を取り戻し、ついにはさっきまでお姉ちゃんが持っていたおいしそうな朝ごはんに戻る。
元の姿に戻った朝ごはんをお姉ちゃんは私に差し出して言う。
「続きはご飯食べてからにしよう」
食欲は、全然わかなかった。
「じゃあもうひとつの魔法は、この私が教えてあげますよお姉様!」
やっと起きてきた妹と一緒に朝ごはん(妹が食べてるのは私がスライムにしたもの)を食べているときに朝の魔法練習の話をすると、妹は勢いよく立ち上がって手を上げて私の指導役に立候補する。お行儀悪い。
「別にいいけど、ちゃんと教えてあげるんだよ。二人きりになったからって襲うなよ?」
「なんで私を見ながら言うのよ」
「お姉様も、私のことそういう風に思ってくださっていたんですね」
目を輝かせながらこちらを見る妹。
「だからそんな風に見てないし思ってない」
「まったくお姉様は相変わらずツンデレですね」
「腕を絡ませるな! 暑いでしょ!」
振りほどこうとするが中々離れない。固定魔法でも使ってるんじゃないのかこれ。
「じゃあ早くご飯食べていちゃいちゃしましょう、お姉様」
「もうどうでもいいや」
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