第1章

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(……糸?)  教室の中をヒキで見ると、空の床(床の空?)に細くて透明な糸が張り巡らされている。  目を凝らさなければ分からないソレは、張り巡らされているといっても、蜘蛛の巣ほど繊細に詰まっていなかった。むしろガバガバで、体育祭の障害物競走で使われる網より編み目がでかかった。  だけどオレ以外のクラスの人間は、  その糸の上を歩いている。  細い糸の上を、糸を見ずに歩いている。 (この糸の上を、歩けばいいのか……?)  試しにそろりと足を載せてみた。  綱渡りのように弛んだ感触はなく、いつも歩いている床の感覚だった。  けれど視覚効果のせいで、どうしても恐る恐るといった足どりになってしまう。  それを見た友達が、「何やってんだよー」とからかってきた。返事はできなかった。  やっとの思いで席に到着した。  椅子を引いて、腰を下ろす。  机の上に鞄を置く。  少し軋んだ音がしたけど、それはいつものことで安定感は抜群だった。  だけどやっぱり、宙に浮いていた。オレの目にはそう映っていた。
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