第1章

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 教室の戸を開けたら、そこには、空の上に並ぶ机と椅子があった。 (ハァ?)  あまりの光景に、オレは棒立ちになった。教室の戸の上にあるプレートは、『二年八組』とある。間違いなくオレのクラスだ。  大きな窓に薄汚れたクリーム色のカーテン。  チョークの粉が残る黒板。今日の日直は、鏑木(かぶらぎ)と小野田(おのだ)。  掃除用具入れのロッカーと各自のロッカー。クラスの女子がデコった、やたらハデな掲示板。  ガタガタに整列している、机と椅子。  それらを全部載せている床がーー空の上になっていた。  青い空に、白い雲がゆっくりと流れている。  オレの足下で。 (ああコレ、東京タワーにあったわ)  床がガラス張りになっている、アレ。百メートル以上の真下が覗ける度胸試しの名物。  名前は確か、ルックダウンウィンドウ。  だけどオレのこの足下は、ガラスを通した光景なんかじゃない。ましてやこの頃流行りのプロジェクションマッピングを床に投影しているわけじゃない。  正真正銘、この教室は宙に浮いている。  真下から吹いている風が、それを証明していた。
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