第1章

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 じりじりと目線を外さないまま後ずさると、後ろにいたヤツとぶつかった。 「わっ」  思わずつんのめりそうになるのを、戸に手をかけてギリギリでこらえる。 「あ、ゴメン」  後ろにいたヤツーー同じクラスの女子が謝った。けど目は、ちょっと当たったくらいで大袈裟ねと非難していた。  大袈裟じゃねーよ! 落ちたらどーすんだ!  具体的には分からないけど、地上が見えないってことは相当な高さだ。それこそ東京タワーどころかスカイツリーもメじゃないレベル。  無言でニラみつけるオレを無視して、女子はさっさと教室に入っていった。ーーって、オイ!  落ちる!  反射的にそう思ったけれど、女子は普通にスタスタと歩いていった。  友達と挨拶を交わしながら、ゆうゆうと自分の席に着く。 (あ、れ……?)  へーき、なのか?  空中を歩く女子を目にして、オレの中で疑問が生まれる。  と同時に、力の抜けた手から、ずっと握っていた自転車のカギがするりと落ちた。  カギはーー白い雲を通り抜け、青い空に吸い込まれていった。  普通に落ちていった。  いつまで経っても底に着いた音が聞こえてこない。 (うわぁああああああ!)  ダメじゃんやっぱダメなんじゃん! 普通に落ちてんじゃん!  オレの足が自然に半歩退がる。どーすんだコレ。そろそろ授業始まるんですけど。  声もあげずに冷や汗だけ流し、途方に暮れていたときだった。  オレの目が、何かを捉えた。
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