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じりじりと目線を外さないまま後ずさると、後ろにいたヤツとぶつかった。
「わっ」
思わずつんのめりそうになるのを、戸に手をかけてギリギリでこらえる。
「あ、ゴメン」
後ろにいたヤツーー同じクラスの女子が謝った。けど目は、ちょっと当たったくらいで大袈裟ねと非難していた。
大袈裟じゃねーよ! 落ちたらどーすんだ!
具体的には分からないけど、地上が見えないってことは相当な高さだ。それこそ東京タワーどころかスカイツリーもメじゃないレベル。
無言でニラみつけるオレを無視して、女子はさっさと教室に入っていった。ーーって、オイ!
落ちる!
反射的にそう思ったけれど、女子は普通にスタスタと歩いていった。
友達と挨拶を交わしながら、ゆうゆうと自分の席に着く。
(あ、れ……?)
へーき、なのか?
空中を歩く女子を目にして、オレの中で疑問が生まれる。
と同時に、力の抜けた手から、ずっと握っていた自転車のカギがするりと落ちた。
カギはーー白い雲を通り抜け、青い空に吸い込まれていった。
普通に落ちていった。
いつまで経っても底に着いた音が聞こえてこない。
(うわぁああああああ!)
ダメじゃんやっぱダメなんじゃん! 普通に落ちてんじゃん!
オレの足が自然に半歩退がる。どーすんだコレ。そろそろ授業始まるんですけど。
声もあげずに冷や汗だけ流し、途方に暮れていたときだった。
オレの目が、何かを捉えた。
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