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教室の戸を開けたら、そこには……やはりというべきか、僕が敬愛し畏怖する先輩がいた。
完全下校時刻も過ぎ、斜陽が差し込む教室に一人佇む女生徒。
半身を黄金に染め、凄惨に微笑むその姿は、断罪を下す戦乙女を想起させた。
「あら、立岡くん。一度下校したというのに、わざわざどうしたのかしら」
そう、僕と先輩は先ほど連れ立って下校している。
なのに僕らは、こうしてまた相まみえている。
「先輩こそ、下級生の教室でどうしたんですか。通り魔が彷徨いているから出歩くのは危ないって、さっきも言ったでしょう」
先輩はクスクスと笑った。僕の言葉の奥にあるものを見透かしたかのように。
「そう、それよ。あなたはさっき脈絡なくそんなことを言い出した。あれは……あなたがバッグに何かをしまい、私がそれに視線を走らせた瞬間だったかしら」
さすがに目敏い。今更ながらほぞを噛んだ。
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