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私の魔法なんてもうない。転移魔法も転移させるものがなければ使えないし、浮遊魔法も浮くだけだし、もう打つ手が…………ある。あるじゃないか私には、しかもこれだけ氷、いや水がある環境、あの魔法を試すには絶好の機会じゃない。すっかり忘れてた。
「もしかしてもう降参ですか? これじゃあなたには点数がつけられませんね。要は不合格です」
迷っている暇は無さそうだ。私は祈るように手を合わせ、目を瞑り集中する。限界まで自分の中の魔法力を高め、魔動力で練り固めるような
イメージを繰り返す。
「ん? なにを…………ってまさか」
お姉さんも私が何をしようとしているのか理解したらしい。慌てて防御魔法や妨害魔法を発動させようとしている。しかし私の魔法発動のほうが少しだけ早かった。
「いっけぇぇぇぇ!! アクアキャット!!」
目いっぱいその名前を叫ぶと、氷の中から巨大な猫型の生物が現れる。しっかりとした形ではないが、それでも猫のようには見える。どう
やら無事に成功したらしい。
「召喚魔法ですか!! どうしてそんな高等魔法を!?」
「いやー私の妹の得意魔法ですので」
と言っても、私が出来るのは四分召喚だけなのでそれほど強くないのだけど。持続時間も短いし。
アクアキャットは召喚されると敵味方の識別を瞬時に行い、お姉さんに向かってストンプを繰り出す。そのたびに地面の氷は砕け、凍土が剥がれていく。
「けれど所詮は水で出来ているもの。凍らせてしまえば何も怖くはない!」
重量級のストンプを両手で受け止めたお姉さんは、その両手が触れた箇所から青猫を凍らせる。
「これで、この猫はもう使えない。さぁどうする――がはぁ」
「本命はこっちだよ!」
青猫のストンプで自由になったことちゃんが、相手の腹部に右アッパーをかます。けれどこれで終りではない。このお姉さんは私の手で殴らなきゃ!
「だから、やっぱり最後は物理でしょ!!」
私も空から一直線にお姉さんの綺麗な顔面へ向けてとび蹴りを食らわす。後頭部にヒットした私の蹴りでお姉さんは凍土に顔を埋めて土下座のような形になった。意外ととび蹴りの威力が高くて私びっくり!
「よし! これで第一関門クリアだね!」
「最後えげつなかったけど、まぁ大丈夫か」
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