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卵焼きをひたすら頬張りながら言うお姉ちゃん。
「どうしよう衣装とか今から着替えたらもう間に合わないよ!」
「それでは、今日は私が会場まで送って差し上げますよお姉様」
「え?」
「転移魔法……は目立つので、今回は上位移動魔法にしましょう」
さらりと上位魔法を使うと言った妹。あんた、そんな魔法で会場行って目立たないと思ってるの?
「じゃあ、衣装はこれを使うといい」
お姉ちゃんは隣の椅子に置いてある箱を叩く。
「それは?」
「私が試験で使った衣装で、我が家に代々伝わる魔法正装だよ」
「そんなもの、私が着ていいの?」
「いづれはあんたにあげようとしてたものさ。タイミングとしては今が丁度いいと思ってね」
そう言ってお姉ちゃんは箱を私に差し出す。
「早く着替えてきなさい。十分後に家を出るよ」
私は力強くうなずくと、駆け足で自室へ向かう。
「私も着替え手伝いましょうかお姉様ー」
「部屋覗いたらぶん殴るからね!!」
「お姉さまに殴られるなら、むしろご褒美です!」
ああもう、さっさと着替えよう。
会場に着くなり、私達は注目を集める。
それもそうか。
最強の魔法少女と天才魔法少女の間に挟まれて注目を集めないほうが難しい。
「ねぇ、いい加減離れてくれないと、私受付に行けない」
私は吐きそうになりながら言う。
急いでいたとはいえ、上位一級魔法である高速飛翔魔法を使わなくてもよかったと思う。未だ視界が若干回ってる。
「そうは言っても、一人で歩けないでしょお姉様」
それはそうだけれど。
「それに私、今日の試験で審査員補佐を請け負っているので、受付は多少遅れても大丈夫ですよ」
それは不正だ。
「早く受付済ませて、あんたも控え室で最終調整しときなさい。朝メンテナンスしたとはいえ、自分一人で使えるかどうか、最後に確認しておいたほうがいいぞ」
「分かってるよ」
私は膨れっ面で答える。
こういうときだけお姉ちゃんぶるんだから……まぁ、実際お姉ちゃんなんだけれど。
「じゃあ、頑張るんだよ」
お姉ちゃんは先に会場へ向かう。応援席で私の出番を待つのだろう。
「それじゃ、私もそろそろ委員のほうに合流しないといけないので、これで失礼しますね」
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