魔法少女認定試験

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 再び神妙な表情になる彼女は腕を組み便器に座りながら話しはじめた。……話すだけなら個室の外でよくない? 「”次の魔法少女認定試験には、特殊試験を設ける”」  トイレの個室で話すような軽い内容ではないことは理解できた。だから外で話そう。私が個室の鍵を開けようとすると彼女は私の腰を掴み、自分のひざに座らせた。なにこの状況、どっからどう見ても真剣な話をしてる体勢じゃないし、はぁはぁ言ってるし怖い。いろんな意味で襲われそう。 「特殊試験って言うのがどんな内容なのかは分からなかったけれど、一つだけ分かっていることがあるの」 「この話、このまま続けるの?」 「ランダムで選ばれた数組に、最大三名の”魔法少女候補”を入れてその試験は実施されるらしい」  どうやら私の意見は却下されたらしい。……ん? 魔法少女候補? 「でもこの試験受けてるのって魔法少女候補だけだよね? なに? 一般人が混じってるってこと?」 「そうじゃない。候補ではなく魔法少女が試験に混じり、魔法少女候補に対して何かを仕掛けるのだと推測します。実際私達の組には数年前試験を合格した人が何人か紛れ込んでいました。すんすん」 「ちょっと待って。それじゃ私達の組がその特殊試験の実施枠ってこと?」 「そう。だから普通に試験を受けるのではなく何か特別な試験を受ける可能性があるということを言いたかったのです。いい匂い」 「そっか。それじゃ何かあっても慌てず迅速に対応すればいいってことね! あとちょくちょく髪の匂い嗅ぐな気持ち悪い」  私は何とか彼女のアームロックから逃れると、個室の扉を開ける。今度は彼女も邪魔はしなかった。話はこれで終りということだろう。 「何か変わったことがあるまで普通に試験を受けて、緊急事態が起こったときはあなたと協力して解決するってことでいいのよね?」 「はい。私は五感性能鋭角化の魔法を自分にかけて辺り一辺を警戒しますので、あなたもせめて自分の周りは注意して見ていてくださいね」  顔を上気させながら言わないでほしい。誰かが見てたらなにかあったと思われるじゃない。まぁなにもなかったと言えば嘘になるが。 「それとさ、名前教えてよ。もしもの時にねぇとかちょっととか言っても反応遅れるだろうし」
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