魔法列島

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 冷静に考えればあんなものただ痛いだけなのに、どうしてそのときの私はどこか嬉しそうだったのか、今はもうわからなくなってしまった。いやもう今後一切理解はしなくていいかもしれない。変態の知り合いは変態であるが、私は普通でありたい。いや魔法使える時点であんまり普通じゃないけれど。 「あら今日も良い天気」  窓から見える空は晴天そのもの。雲がひとつも見当たらない。晴れやかで輝かしい青。私軽く引きこもりでお外あんまりでないから関係ないけれど。 「さてはてさて、この子が起きる前にベッドから抜け出さないと」  隣で寝ている我が親友、みゃーこちゃんを起こさないようにそーっとゆっくりじんわり動く。やばいこの体勢私が襲ってるみたいじゃない。昨日こういう体勢で下はあったが、上になったのは初めてである。こんな経験親友でしたくなかったわ。 「そーっと、そっとそっと。よし、完璧」  どうにかみゃーこちゃんを起こさないように抜け出せた。嫌な汗が出てしまったぜ。  それから音を立てずに部屋を出ると、洗面所で諸々済ませてリビングへと向かう。どうやらまだ誰も起きていないらしい。あっいやお父さんが起きてた。新聞をこれでもかと思うくらい思いっきり広げて見ている。その体勢で読むのって意外と疲れない? とりあえず挨拶しよう。 「おはようお父さん」 「…………」 「お父さん、おはよう」 「…………」  父上殿、可愛い可愛い娘が挨拶をしているのだから反応してもいいと思うのだけれど。いや自分で可愛いって言っちゃう様な変な子だけれど、あなたの娘様ですよ? もう少し反応してくれないと私拗ねちゃう。でもまぁ、お父さんが無反応なのはいつものことだから今更なにも思わないけれど。  私はお父さんが座るソファの端にちょこんと腰掛けると、テレビの電源をつける。この時間はニュースくらいしかやっていないが、いくらかこの気まずい雰囲気は和らぐだろう。 「……」 「……」 「…………」 「…………」  なんだよこの地獄空間。まるで終わりきった夫婦の朝みたいじゃないか。何か話そうぜ、何か。昨日の夢の話でもいいし、アダルティな話題でもついていく自信ありますよ。私は夜激しいのです! とか聞いてないかそうか。いやしかしお腹すいた。お母さんまだ起きないのかな。 「仕方ない、自分で作るか」
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