魔法列島

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 ないなら自分で作るしかない。私は短い間お世話になったソファから離れると、ダイニング奥にあるキッチンへと向かう。そこでふと思い、お父さんへ向き直る。一応聞いておかなければ。 「お父さんも何か食べる? まぁあんまり美味しくないと思うけど」 「…………」  お父上よ、頷くだけでなく何か言ってほしかった。折角お話の機会を設けたというのに。私の気遣いが水の泡風呂。 「よし、今日はお父さんもいるし、特製バーニングライスファイターセットを作ろう!」  名前だけではどんな料理かさっぱりわからないかもしれないが、安心してほしい、私も実は何言ってるかわかってない。さらに言えばほとんど勢いでしゃべりましたごめんなさい。  まぁ困ったときは腸袋に肉突っ込んだあれやら鶏から生まれる楕円形の白いあれとかを焼いておけばいいさ。あとは丸まった緑のシャキシャキ野郎とか汁が目に染みるあいつやらをサラダボウル! にまとめてぽーいして、しょっぱい茶色のやつを沸騰したお水ちゃんに溶かし入れて、その中にゆらゆら優柔不断の増える例の海草と私の大好きな葱さん! を投入。最後にあったかふわふわ柔らかい炭水化物をお椀によそって出来上がりだぜ! 「お父さんできたよ。テーブルに置いとくからね」 「…………」  随分ゆったりと動くと思ったら、お父さん新聞見ながら移動してるのね。危ないよもう、ちゃんと前見ないとお先真っ暗だぞ。とかほんとどうでもいいこと考える。 「それじゃ、いただきます」 「……いただきます」  おっ、本日はじめて言葉を発しましたなお父さん。しかし悲しいかな、私に向けられた言葉ではない。お父さんってホントお母さん以外の人と話さないから、お仕事ちゃんとできてるか不安になります。  それからは互いに無言で食事をお口に運んでは噛み砕いて胃に収める作業に没頭する。むしゃむしゃぱくぱくごっくんこ。がりがりごりごりごっくんこ。はぁ、今日も平和に朝が過ぎていきますのぉ。
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