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「しようよっ。車の中でする?」 「しない」 「あそこまでしたなら盛れよっ!」 盛ったからあそこまでしたんだよ。 俺にヤられたいって言えば、即、下脱がせて後ろからいれようと思っていた。 せめてフェラさせてから置き去りにしてやろうか。 なんて考えながら車のところまでいくと、なんか空がゴロゴロいってる音が聞こえてきた。 車に乗り込む前に空を見上げると、さっきまであんなに星や月が見えたのに、いつの間にか真っ暗だ。 ぽつりと俺の頬に雨が当たった。 大粒。 降る。 車のカギを開けて運転席に乗り込んで避難。 置き去りにするとも言っていないのに、ヤマンバは俺の腕を離して、助手席に乗り込んでくることもなかった。 運転席側の扉の外からこっちを黙って見ていた。 拉致だったし。 逃げようと思っているのかもしれない。 助手席のカギも開いている。 ぽつぽつ降りだした雨はフロントガラスに当たって弾ける。 通りかかる車もない。 この雨の中、置き去りにしたら死ぬかも。こいつ。 車のキーをさしてエンジンをかけた。 アクセルを踏み込むつもりもなく、サイドブレーキにふれることもなく、車の外のヤマンバの様子を眺める。 雨はざーざーと音が聞こえるくらいに降ってきていて、ヤマンバを濡らす。 こいつならうるさく乗せろと乗り込んできそうなのに、逃げるでもなく、俺が置き去りにするのを見送るつもりのようだ。 運転席の窓を手の甲で叩いて、助手席に乗れと手で示してみせても動かない。 別に殺されてもいいけど。 そんなヤマンバの言葉が耳の奥で繰り返された。 世の中はストレス社会。 運転席のドアを開けて、ただ棒立ちになってずぶ濡れになっていたヤマンバを車の中に引っ張り込んだ。 ヤマンバは俺の上に倒れ込んだかと思うと、何も言わずに泣いていた。 俺がくずしたのもあるけど、雨に濡れて更に泣いて、メイク、ぼっろぼろ。 ブサイクどころかただのバケモノ。 「バケモノ、ラブホでいいか?」 「……どこでもいい。なんでもいい。あんたじゃなくていい」 顔を伏せて泣いたまま答えた。 俺じゃないほうがいいとまた言われそうだ。 なんでもいいくせに。
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